2013年08月22日

ラブザナドゥ/前書き

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 現在作っている「ラブザナドゥ」というゲームについて。





▼原典「ザナドゥ」



 ラブザナドゥはRPGですが、非常に特殊なルールで出来ており、一般にRPGと言われて想像するようなゲームと、かなり違います。
 聞き慣れないルールの半分くらいは、このゲームが、大昔にファルコムから発売され大ヒットした「ザナドゥ(ドラゴンスレイヤーU)」というアクションRPGを原典としているためにそうなっています。具体的に言えば、ゲーム中に登場するほとんど全てのものが「有限」で、何も考えず場当たり的に攻略していると何かしら足りなくなってクリア不可能に陥るという、パズルライクな構造です。
 自分は元々この「ザナドゥ」が同じく人気のあるコンピューターRPG「ウィザードリィ」や「ローグ」系のゲームに並んで好きで、それがラブザナドゥ制作の動機のひとつになっています。

 ウィザードリィやローグのシステムを元にしたゲームは多くあるのに、ザナドゥの特徴的なシステム、駆け引きを発展させたRPGはほとんどありません。
 自分としてもザナドゥで一番面白いのは、あの唯一無二のシステムというよりも、倒した敵がプチッと消えて宝箱に変わる瞬間や、アイテムを拾っていつもの短く軽いSEが鳴った時のような気はしていますが、それにしてもあの特徴的なシステムが何の可能性も模索されずに消えていくのはもったいないと感じています。



▼ラブザナドゥとザナドゥ



 ラブザナドゥはザナドゥの「リソースが限定された環境での戦闘特化RPG」という性質を受け継いでいますが、それ以外の部分は大きく変更されています。
 その理由はだいた2つに分かれており、

“技術、時間、コスト的に再現できない”

 という身も蓋もない理由か、

“ローグライクの「ダンジョンの自動生成」という要素を効果的にザナドゥライクな環境に導入するため”

 なる、今回の制作のキモになるコンセプトに沿った結果となっています。
 このテキストは、上記の2つの理由によって、ラブザナドゥなるタイトルを冠しておきながらザナドゥと大幅に異なるシステムを持った本作を遊んで頂く前に、どこがどう違うのかをざっくりとでも説明しておいて、実際のプレイに対する緩衝材のような効果を狙うものです。



▼戦闘がウィザードリィ式



 さっき「ザナドゥが面白いのはパズル要素より手触り」みたいなことを言っておきながら、最も大きな変更点として、戦闘のウィザードリィライク化が挙がります。ターン制、コマンドで戦うタイプで、手触りの良さという点ではアクションゲームに相当劣るシステムになります。
 だいぶ悩んだのですが、結局この変更の一番の理由は、

“ザナドゥ形式の戦闘システムで使えるようなモンスターグラフィック素材が、フリー素材にはあまりにも少ない”

 というもので、これが9割を占めます。
 特にこの国のフリーゲーム制作環境は、国産のゲームエディタ「RPGツクール」を基盤に育ってきたところがあり、Webで公開されているほとんどのモンスターグラフィックはウィザードリィ式の戦闘を意識したもの、もっと言えばRPGツクールで使用する想定の仕様になっています。ザナドゥの戦闘システムを再現するならRPGツクールでいう歩行グラフィック系のモンスター素材が大量に必要になりますが、これが用意できないのが現状です(もちろんお金を払って発注する手はありますが、ラブザナドゥはフリー縛りの企画でした)。

 実は強引に解決してザナドゥ式の戦闘システムをある程度は再現するアイディアもあったことはあったのですが、逆に「ウィザードリィの戦闘システムが優れているところはどこか」を考えた時、複数のキャラクターを正確かつ複雑にコントロールできるという点に気付き、そこにザナドゥのリソースマネジメントゲームを発展させる可能性を感じたため、素直に戦闘システムにウィザードリィ形式を採用しています。

 つまり、「仲間が増えれば戦力は上がるが、消費しなければならないものは増える」というジレンマです。



▼ローグライクなダンジョン



 戦闘システムの変更に匹敵する大きな違いが、「ザナドゥの乱数生成」というテーマです。
 これに関しては戦闘システムの場合のような「変更せざるを得なかった」という要素はほとんどなく、完全に「やりたかった」部類に属します。

 ザナドゥは大ヒットしたゲームです。面白すぎました。国内に、国外に、多くの、とても多くの、ザナドゥ狂を生み出しました。
 そんな中、ザナドゥのファンであればまず間違いなく知っているWebサイトというものがあります。
 Xanadu Laboratory。これは、ある一人のザナドゥ狂戦士が作った、ラボラトリーの名に相応しい、ほぼ完全なザナドゥのデータベースと、ザナドゥ内での奇妙な冒険ならぬ奇妙な実験のレポートの数々を掲載しているサイトです。

 狂戦士をASTさんといいます。TASさんではありませんが、少なくともザナドゥに関してTASさんの間違いではないかと思うほどの戦いぶりを見せて頂ける人です。自分の憧れの狂戦士さんです。「なにそれこわい」的な狂気を感じさせるまでの様々な実験――縛りプレイに挑み、そのほとんどをクリアしてのけています。ザナドゥを知らない人も想像してみてください、例えばドラクエを左に行かずにクリアすることになったと言い出す狂戦士を。クリアしてしまう狂戦士を。
 まだコンピューターがテープでものを記録していた時代から、一切変形せず、追加もされていない石の洞窟に、自分の方が変形してまで幾度となく挑戦する、そのあまりの狂戦士っぷりに、ある時、思いました。

 狂戦士さんのファンとして、狂戦士さんに、変形するザナドゥを贈りたい。

 その気持ちが、構想から細かい打診を経て、実際面白いゲームになるかもしれないという個人的な興味にも繋がり、ラブザナドゥの制作は始まっています。
(そういうわけで、ぶっちゃけたところ、このゲームは多くの人に遊んでもらいたいとかそういう視点があんまりなく、基本的にはASTさんへのラブレターに近いコンセプトで出来ているわけです)
 偶然ではありますが、結果的にラブザナドゥは、ウィザードリィ、ローグ、ザナドゥという、爆発的にヒットして後世に大きな影響を与えたRPGが一堂に会するような、そんな企画になりました。ウルティマは入ってません。ついでに今回はそんなに言うほど大したものになりませんでした、すいません。
 ちなみに、ラブザナドゥは以前に、プロトタイプがRPGツクールで作られていますが、これはザナドゥの画像データを無断でふんだんに使用した公表できない作品で、ツクールを遊ぶための別のデータをダウンロードする必要があったり、あくまでツクールなのでシステムが柔軟ではなかったりで、HSPでまったく新しいゲームとして作り直されることになりました。



▼レベル(階層)が全部で5つしかない



 構想中のゲームが別にあったりで、あまりコスト・時間をかけずに作らなければならないという前提があったのもそうですが、もともとラブザナドゥは「チェスを一局打つような気分で迷宮と向き合うゲーム」を目指すというイメージがありました。
 ASTさんが「手軽に短時間で遊べるRPGがない」という趣旨の発言をしていたのもあり、また元ネタのザナドゥ自体、慣れれば全10レベルをきっちり攻略する必要はまったくないという性質もあって、レベル数を思い切って半減しています。
 ザナドゥは迷宮が変化せず、プレイヤーが戦略を変化させ、あるいは自分に試練を課して遊びを変化させるゲームだったため、固定されたダンジョンがプレイヤーの幅広いプレイスタイルを受け止めるという意味で、10のステージが用意されている点がとてもよく機能していましたが、ラブザナドゥは「迷宮が自動で出題し、プレイヤーが最適解を追う」ゲームであるため、余分なレベルを最初から排除するくらいがスピーディーでいいだろうと判断しています。
 結果として全5階層でも、乱数生成独特のゲームバランスの崩壊により、ほぼショートカットが出来るようになっています。基本的に、生成されたダンジョンの欠陥を見つけて、欠陥を突いてボロ儲けのうちに勝つ、というスタイルが攻略の前提になると思われます。ザナドゥで言う「電撃戦」のような汚い勝ち方がデフォルトで、ただし毎回、その汚い戦術というのが違う、というシステムです。



▼タワーもサイドビュー



 ザナドゥは2つの視点が用いられているゲームです。
 フィールドでは重力の概念があるサイドビューですが、戦闘時や、タワーと呼ばれるダンジョン内ダンジョンに入るとトップビューになります。

 が、ラブザナドゥでは、タワー内もフィールドと同じサイドビューで攻略することになります。
 この理由は、ひとつに

“本来、トップビューを使用するはずの戦闘シーンが変更になっているため、タワー内をトップビューにする必然性がない”

 というものがありますが、これよりさらに大きい理由として、

“フィールド攻略用の、地形問題を解決するタイプのアイテムの活躍機会を増やす”

 があります。
 もともと、全シーンでアクションであることを強調していたからこそ、サイドビューが活きていたのがザナドゥでした。
 それがコマンド戦闘になったことで、フィールドがサイドビューである必然性というものが、印象として薄くなってしまっています。
 いっそウィザードリィ、またはドラクエ式の平面マップにしても困ることはないのですが、そこはザナドゥっぽいゲームとしてさすがに変えたくはなかったので、再び逆に「サイドビューマップの面白みはどこにあるか」を考えて、それを「下に行くのは簡単だが、上に行くには条件が揃わなければならない」という非対称性の駆け引きにあると定義しました。

 行く手を阻む地形問題をアイテムの効果で打ち消して進むというギミックが、乱数生成のダンジョンであってもウィザードリィの迷宮のような「ある地点に仕掛けがあって進めない」「罠にかかって死んだ」などのシーンに相当する面白さを引き出すのではないか、という期待をもって、地形解決系のアイテムをザナドゥより2つ増やし、既存のものの効果も若干使いやすく仕様を変えています。
 そしてサイドビューを変更しない以上、この「サイドビューの面白みを引き出す」というテーマを強調するべく、タワー内もサイドビューにしています。

 ジャンプでは脱出できない場所に落ちてしまったという展開はザナドゥでもありましたし、ラブザナドゥでは乱数生成される地形がかなり理不尽な構造になるため、地形をアイテムで解決して進むというスタイルはうまく機能したと思っています。



▼クラフト



 システムを変更しているというよりは、追加している印象を与えるだろう要素が、クラフトです。
 ラブザナドゥでは敵が落とすアイテムは「素材」に属するものが大半で、そのままでは役に立ちません。基本的にはお金も落としてくれません(一部の敵は落としますが)。
 これをレシピにしたがって合成することで、初めて見覚えのある有用なアイテムになり、あるいは店で売ることで、初めてプレイヤーはお金を獲得します。
 素材合成システムは、カプコンのアクションRPGゲーム「モンスターハンター」のヒットで急速に一般化し、海外の大ヒット個人製作ゲーム「マインクラフト」でもおなじみとなりましたが、ラブザナドゥにこれを入れようと思ったのはもちろんモンハンやマインクラフトとはあまり関係がなく、

“プレイヤーの判断機会を増やす”

 という点が大きな理由としてあります。 
 ザナドゥはプレイヤーが出来ることが多い反面、間違い道も多く、しかも現代の感覚でいえばやって良いに決まっている「獲得」や「成長」といった行為さえ罠になり得るという孤立感が醍醐味のひとつになっています。(余談になりますが、昔のゲームデザインには、TRPG起因なのか、強くなるのは自由だけど強くなるとデメリットが増えるよ、という構造が主流なところがありました)
 この判断の迷宮たるザナドゥのシステムを発展させる上で、「この素材はどのアイテムに変換すべきか、それとも売ってお金にするべきか」という駆け引きを増やしたかった、というのがクラフトの主たる意味です。
 これはサディスティックな要素というだけではなく、ラブザナドゥではダンジョンの内容がゲーム毎に変化するため、状況に合わせて獲得するアイテムをプレイヤーが調整できるという、難易度緩和の側面もあります。
 また、ザナドゥにおいてなぜモンスターがお金やアイテムを落とすのか、という文脈についての話で、モンスターから採れる素材を売ったり加工したりしていると説明されていることがあったので、そこを拾う形にもなりました。



▼その他無数の差はあれど



 印象として最初に目立つであろう変更はこのあたりですが、そもそも基本的に「ここがこう違う」とかいう次元ではなく、「ザナドゥをベースにした別のゲーム」という立ち位置なので、他にも無数の差異があります。
 せっかく作ったので、「ぜんぜんザナドゥではなかった」という印象が先にくるのもナンだな、と思い、言い訳がましい話を長々と書き連ねましたが、いちおうゲーム紹介を兼ねているので、許して頂きたい。
 半年で作り終わるはずが、(プライベートな話で恐縮ながら)途中で嫁と別れるという大事件で死んだり、死んでいた期間を除けば半年ほどで完成したはいいけど全然面白くなかったりで、無茶苦茶に時間がかかってしまいましたが、来月1日で公開になります。

 ラブレターとしては不本意な感じですが、遊んでいただけたら幸いです。


 なお、ASTさんは動画も公開しております。
 熟練の竜殺しの弟子はなんと女性

posted by 座間 at 14:49| Comment(1) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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完成が楽しみです
Posted by amo at 2013年08月29日 09:27
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